NHK | 【解説】ウクライナへの戦車供与はどうなる? 米陸軍長官 エイブラムスの年内供与は難しい可能性を示唆 米高官「戦闘機供与 現実的ではない」 決定は「単なるポーズ」との見方も
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緊張が続くウクライナ情勢。
ウクライナへの軍事支援として注目されているのが戦闘機の供与です。
アメリカ国防総省のカール国防次官は2月28日、議会下院の軍事委員会の公聴会でF16戦闘機について機体の供与や訓練も含めて実戦配備するまでにはおよそ1年半かかるとの見通しを示しました。
これはすでに使用されている機体を供与する場合で、新しい機体を供与するには最大で6年かかるとしています。
カール国防次官は
「1年半後にようやく使えるものに30億ドル使うよりは地対空ミサイルや歩兵戦闘車、155ミリりゅう弾砲に使う方が合理的だ」。
とした上で
「F16戦闘機を供与することが最良の選択だとは言えない」と述べ、現時点で供与は現実的ではないとの考えを示しました。
また、アメリカ政府が先に供与を表明した、こちらのM1戦車、エイブラムスについても年内は難しいという趣旨の発言があり物議を醸しています。
発言したのは陸軍長官で「数週間や2か月では供与できない」「しかし、2年や1年半はかからない選択肢はある」と述べました。
陸軍長官は、できるだけ早期に供与すべく今も検討中としているものの、年内供与は難しい可能性を示唆したのです。
このため、アメリカの供与表明は「ドイツ製戦車レオパルトの供与を渋っていたドイツ政府を説得するための単なるポーズだった」という見方も出ているのです。
それを裏付けるかのように、アメリカの大統領補佐官が戦車供与を決めた経緯について「バイデン大統領は当初、エイブラムスを供与しないと決めた。米軍から有用ではないと助言されたからだ。しかし、アメリカが供与を表明しなければドイツもレオパルトを供与しないと伝えてきた。だから、必要ないものの大統領は承諾したのだ」と発言をしました。
これについて、アメリカでは批判の声も出ています。
アメリカの新聞ウォール・ストリート・ジャーナルは、「エイブラムスがウクライナに届かない恐れも」と題する社説を掲載。「供与する頃には戦争は終わっているかもしれない」と皮肉っています。
一方、アメリカの新聞「ワシントン・ポスト」は、社説で「長期戦に直面しているウクライナは西側の戦闘機が必要だ」と題し、F16の供与やパイロットなどの訓練を早く検討すべきだと主張しました。
両紙に共通するのは、バイデン政権が後手に回っているという見方です。
バイデン政権は、ウクライナに巨額の軍事支援を行ってきましたが、供与する兵器については段階を踏むように徐々に攻撃力を高めた兵器を供与してきました。
その段階方式が、時間がかかっている要因とも見られていて、中には、攻撃力の高い兵器を一気にウクライナ側に供与した方がロシア軍を早く撤退させられるという意見も出ている。
どの兵器をいつ供与するのか。2年目に入った軍事侵攻は出口が見えないだけに、戦争を早期に終結させたい、その思いや焦りも議論を過熱させているのかもしれません。
【出演者】油井秀樹キャスター
酒井美帆キャスター
【放送情報】NHK BS1 毎週(月~金)午後 10:00~ 国際報道 2023 https://www.nhk.jp/p/kokusaihoudou/ts...
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