富士通Habitat.
ハイパーコミュニケーションネットワーク 富士通Habitat(ハイパーコミュニケーションネットワーク・ふじつうハビタット)は、かつて富士通株式会社が運用していた画像つきチャット。 ビジュアル通信と富士通は呼んでいる。
4種類のサービスが提供された。富士通Habitat、Habitat IIエリシウム、Habitat IIグレースビル、J-チャットである。
富士通Habitat
元々はアメリカでルーカスフィルムが運営していたLucasfilm's Habitatのライセンスを富士通が購入し、日本での提供を開始したもの。1989年末からFM TOWNS専用ソフトとしてテスト運用が行われ、1990年2月10日に正式サービス開始。この日は「富士通Habitat建国記念日」とされた。その後同社のFMRシリーズや、NECのPC-9800シリーズ、Macintosh向けにもクライアントソフトが提供された。J-チャットまで引き継がれたため、多くのMacintoshユーザーも存在した。ただしOS9までのサポートになっていた。 ニフティサーブ会員専用のサービスで、2Dのアバターを操作し仮想の街の中でチャットを行うもので、当時としては文字だけのチャットを脱却した画期的なものであった。ただし専用ソフトが必要なことに加え、当時のパソコン通信のニフティサーブの回線、FENICS-ROAD2(2400bps)の通信速度ではレスポンスが遅く、アバターの動きに制約があった(アバターの表情を自由に変えられない、など)ことなども重なり、ユーザー数は伸び悩んだ。
Habitat IIエリシウム/グレースビル
1996年にはHabitat IIエリシウムとして全面リニューアル。Windows 3.1、Windows 95やセガサターン、FM TOWNS マーティーに対応し、アバターのカスタマイズの幅が広げられるなどサービスを強化。ただしセガサターン、FM TOWNSマーティーに関しては画質が荒く、周囲にアバターが多いと回線切断が頻繁に起こるという難点もあったため利用者は増えなかった。サイコロゲームのイベントなどを主催する場合に「セガサターンの人優先で参加」などという配慮もあったがゲーム中に固まって回線が切れて落ちてしまい、結果的にはゲームに時間がかかるだけという事態も発生し、一部の人はパソコンを購入した人も見られたほどである。通信速度はニフティサーブのFENICS-ROAD2(2400bps)、またはFENICS-ROAD4(14.4kbps)のいずれかが選択できたが、2400bpsの速度では混雑時にアバターの動作や移動に時間を要してしまい、不満の声も多く聞かれた。FENICS-ROAD4は課金がROAD-2の2倍で、1分16円だったため、利用者は少なかった。同年には専用ソフトが無償化される。1997年9月にはエリシウム内に、新たに3D空間対応のHabitat/3Dもスタートしたが、画像処理が追いつかず利用者はほとんどいない状態であった。
並行したサービスとして1998年2月にHabitat IIグレースビルがスタートする。グレースビルは日本のオリジナルではなく、当時のWorldsAway(現在のVZONES)の運営元であるFUJITSU SYSTEMS BUSINESS OF AMERICA社からライセンスを購入したものである。グレースビルはインターネットISDN回線の64Kbps、アナログ回線の56kbps専用で、HabitatIIエリシウムと異なりセガサターン、FM TOWNSマーティーでのログインは不可能であった。アバターの動作速度に関しては大幅に改善される。エリシウムとは別のサービスであったため、双方の往来は不可能であり、アバターは新規から作り直しであったが、ジャングルなどのエリシウムの10倍以上の空間が確保されていた。ターフというアバターが居住できる部屋も、2箇所に借りることができた。HabitatIIエリシウムはアイテムを単に床に置くことしかできなかったが、グレースビルは椅子や家具、装飾品が多数販売され、部屋のオーナーが座標を指定して床以外にも自由に設置できた。アイテムの盗難防止で部屋に固定もできた。椅子に座れるようになったことも改善点である。ただしサービス期間としては1年6ヶ月で短命であった。キャラクター同士においては富士通Habitatを「ハビ1」、エリシウム、グレースビルを「ハビ2」と呼んで区別しており、更にエリシウムをV1(バージョン1)、グレースビルをV2(バージョン2)と呼んでいた。
J-チャット
1999年3月に富士通Habitatは2000年問題を理由として、サービスを終了。富士通HabitatIIエリシウム、グレースビルは1999年8月にサービスを終了し、同年9月に女性会員の加入拡大を狙った日本オリジナルのJ-チャットとして再オープン。当初タレントの郷ひろみをチャットのゲストとして迎えたイベントも開催された。ただし外部から他の人を呼んだイベントはこれが最初で最後であった。当時の観客人数も500人以上になり、過去最大のログイン人数となる。ビジュアルチャットの先駆けとしての存在感は大きいものがあり2006年には1日限定で富士通HabitatIIの再現イベントが行われるなど、根強いファンを抱えていた。J-チャットになってからも一定期間はHabitatIIグレースビルのエリア一部が残されていて、入り口は非公開ではあったが自由に出入りが可能になっていた。HabitatIIエリシウムのエリアもイベントで公開された。有料アイテム、部屋も発売になり、イベント、J婚と呼ばれた結婚式も以前より盛んに行われた。J-チャットは、2010年1月26日にサービスが終了したが、Habitatシリーズ単独のサービスとしては10年間と最も長期間で、計20年の歴史に終止符が打たれた。J-チャットは終了後、思い出写真館[3]として公式のホームページに当時の画像を残していたが2017年7月、リンク切れとなった。ユーザーが開設していたホームページも解約などから閉鎖が相次ぎ、Yahoo!ジオシティーズも2019年3月にサービスが終了したため、サービス終了から相応の年月が経過し、その痕跡も見ることはほとんど無くなっている。
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