
「GUILTY GEAR -STRIVE-」開発インタビュー。オープニングムービーやストーリーモードなど映像パートの開発秘話を聞いた
6月11日に発売されたアークシステムワークスの対戦格闘ゲーム「GUILTY GEAR -STRIVE-」(PC / PS5 / PS4 / ARCADE)。本作は1998年に発売された「GUILTY GEAR」から続く,人気格闘ゲーム「GUILTY GEAR」シリーズの最新作だ。
「GUILTY GEAR」シリーズと言えば,奥深い駆け引きが楽しめる格闘ゲームとして,古くからアーケードゲーマーを中心に高い支持を得ているタイトルだが,評価されているのは格闘ゲームとしての完成度だけではない。3Dグラフィックスを2Dアニメのように動かす映像表現や,それを活用して描かれるストーリーモードなどは,「映像作品」としても大きな注目を集めている。
今回4Gamerは,「GUILTY GEAR -STRIVE-」の格闘ゲームパートではなく,オープニングムービーやストーリーモードといった映像パートでの開発秘話を,石渡太輔氏をはじめとする制作スタッフに語ってもらった。
なお,インタビューは2パートに分けて実施し,オープニングムービーについては,アートディレクターの坂村英彦氏と永野 覧氏に,ストーリーモードについては,ゼネラルディレクターの石渡太輔氏と坂村英彦氏にそれぞれ聞いている。
後半,ストーリーモードのパートではできるだけネタバレに配慮しているが,一部含まれてしまっているので,ネタバレを踏みたくない人は注意してほしい。
「GUILTY GEAR ‐STRIVE‐」公式サイト
オープニングは作品の集大成としてストーリーにフィーチャーしたものを
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。最初のパートでは,オープニングムービーについてお聞きしていきます。発売日の2日前に公開されていましたが,反響はいかがでしたか。
坂村英彦氏(以下,坂村氏):
我々の想像以上に良かったです。過去シリーズのオープニングは格闘ゲームのフォーマットに則って作られたものばかりだったこともあり,今回のようなフルアニメーションのものが新鮮でより喜んでもらえたのかなと思っています。
Guilty Gear -Strive- Opening Movie
4Gamer:
格闘ゲームのフォーマットというと,キャラクターの全身絵とバトルアクションを紹介するような形ですよね。今回はなぜフルアニメーションにしたのでしょうか。
坂村氏:
永野のこだわりとして“格闘ゲームの映像は入れずに,フルアニメーションでやりたい”というのがあったんです。自分でも同じことをやってみたいと考えていまして,それであればということで今回はフルアニメーションのオープニングを採用することにしました。映像は永野がすべて1人で制作しています。
永野 覧氏(以下,永野氏):
「GUILTY GEAR」シリーズってストーリーが人気のタイトルですし,今回はソルの物語が終わりを迎えることもあったので,集大成としてストーリーにフィーチャーしたフルアニメーションのオープニングを何としても作りたかったんです。
坂村氏:
ストーリーに一区切りつくというのは大きいですよね。これまでやりたかったけど手を出せなかったことにも挑戦して,満足のいく区切りをつけたいという気持ちは強かったと思います。
もともとアニメーションが好きなスタッフばかりなんですよ。今回のような映像を作るのに憧れみたいなものがあったのは確かですし,格闘ゲームのフォーマットだとあまり代わり映えしないと思ってもいました。
坂村英彦氏(写真左),永野 覧氏(写真右)
4Gamer:
これまでにやったことがない試みとのことですが,オープニング全体の構成でこだわった部分などはありますか。
永野氏:
念頭に置いたのはストーリーの完結編らしさです。ソルと“あの男”の因縁みたいなものがオープニングから伝わるようにしたい。あとはソルとカイがシリーズの主人公ポジションだと思っているので,映像の終わりはソルカイで,というのは意識しました。
坂村氏:
石渡からのオーダーとして,格闘ゲーム然としなくてもいいが,各キャラクターの魅力的なカットは用意するというのがありました。あとはストーリーのネタバレは厳禁なので,永野には構成の時点でかなりバリエーションを出してもらいましたね。
永野氏:
ほかにもストーリーの見どころを集めたショートムービーにしないで,イメージ寄りにしてほしいという話はありました。開発ディレクターの片野さんからはプレイアブルじゃないキャラの出番が多いのはちょっと……って言われてしまって(笑)。
坂村氏:
そこは難しい部分でした(笑)。格闘ゲームパートがメインではあるんですが,ストーリーモードにしか出ないキャラも多いので。
永野氏:
本当はヴァーノン(大統領)とか,もっと出したかったんです(笑)。あと,こだわりの部分では,ストーリーモードを観る前と後で印象が変わる内容にしてあります。ぜひストーリーモードをプレイしたあとにオープニングを見直してみてほしいですね。
4Gamer:
制作スケジュールはどれくらいだったんですか。
永野氏:
3か月ほどでした。自分1人に任せてもらった以上,できませんでしたでは済まないので,3か月で作りきれる内容にするという部分はかなり意識しました。
4Gamer:
制作時の苦労話もあれば教えてください。
永野氏:
やはり期間内に作りきれるのかという部分が常に心配のタネでした。半分くらい制作できるまではずっと不安で仕方がなかったです。
坂村氏:
時間がない状況で,1人に任せて制作するのはかなり無謀だったなと思うところはあるんですが,アニメ部分については制作序盤からかなりいいものが上がってきていたので,自分としてはけっこう安心して見ていました。永野は大変だったと思いますが。
4Gamer:
「GUILTY GEAR -STRIVE-」は発売日が1度延期となって,4月9日から6月11日に変更となりました。オープニングムービーの制作期間はどちら合わせだったんでしょう。
坂村氏:
4月の発売ですね。映像制作後のコンポジット※にも時間が掛かるので,年始にビデオコンテ※を完成させて,1月から3月までで制作してもらった形になります。
※コンポジット:複数の素材や動画を1つの映像に仕上げること
※ビデオコンテ:動く絵コンテのこと。映像全体の流れなどを確認する台本
4Gamer:
最後に読者やプレイヤーにメッセージがあればよろしくお願いします。
坂村氏:
永野がかなり細かい部分でネタを仕込んでくれているので,1カットずつ考察しながら観てくれるとうれしいです。
永野氏:
先にも伝えましたが,ストーリーモードを観る前と後ではガラリと印象が変わる映像になっているので,ぜひプレイ後にあらためて観てほしいですね。実は石渡に内緒で分かりにくいネタバレ要素も入れ込んでいるので,プレイ後に小ネタを探してみてください。
「GUILTY GEAR」制作のきっかけは「ストII」との出会い
※以下のパートはストーリーモードの一部ネタバレを含みます。ご注意ください
4Gamer:
続いてストーリーモードについてのパートとなります。ここからは石渡さんと坂村さん,よろしくお願いします。自分も一通りプレイしたところ,かなりボリュームがあったように感じました。開発はいつ頃からスタートしたのでしょうか。
石渡太輔氏石渡太輔氏(以下,石渡氏):
第1弾のプロットを出したのが2年以上前のことなので,かなり以前から制作はスタートしていました。その時点ではもっといろいろなプレイアブルキャラにフォーカスした内容だったんですが,そのままだと内容が膨らみすぎて制作が間に合わないということで,的を絞って制作していくことになりました。
4Gamer:
第1弾プロットを出した時点でプレイアブルキャラは決まっていたんでしょうか。
石渡氏:
ほぼ固まっていましたが,一部キャラは流動的でしたね。そのときに内定していたキャラが変更されていたりもします。
4Gamer:
ストーリーモードと格闘ゲームパートではどちらの制作に時間が掛かりましたか。
石渡氏:
それぞれ時間は掛かっているんですが,格闘ゲームパートのほうが遥かに時間は掛けていますね。ストーリーモードは格闘ゲーム用に作成したリソースなどを流用して作っているということもあります。
坂村氏:
格闘ゲームパートの裏で少しずつ進めているんですが,表に出るのは制作全体の最後のほうです。最後の最後にスケジュールを詰めて一気に制作する感じです。
4Gamer:
ストーリー部分や全体の構成はすべて石渡さんが担当しているのでしょうか。
石渡氏:
はい。まずは自分がプロットを出して,ボリュームの確認やどの素材が必要かをスタッフで確認していきます。当然ですが,プロットの段階では製品版のものよりも遥かに膨大な量になっています。
坂村氏:
そのままではさすがに制作が進められる分量ではないので,石渡さんにお願いして削ってもらうのがスタッフの最初の仕事になります。
4Gamer:
ストーリー部分の話も聞かせてください。「GUILTY GEAR」シリーズ全体のテーマとは何になるんでしょうか。
石渡氏:
初代「GUILTY GEAR」の頃から変わらず,「人間とはなにか」というテーマを掲げています。「GUILTY GEAR Xrd」シリーズからはソルをメインにしたストーリーを展開していますが,ソルという人間の目を通して,人生観を語らせてもらいました。
4Gamer:
「GUILTY GEAR Xrd」からはソルの物語が展開されますが,「GUILTY GEAR XX」シリーズの家庭用ではキャラクターごとにストーリーモードが用意されていましたね。
石渡氏:
これ言っちゃっていいのかな? 実は「GUILTY GEAR XX」シリーズの家庭用には自分は一切タッチしていないんですよ。会社から家庭用に移植するにあたってストーリーモードを作りたいという話が出たんですが,自分が考える今と同じストーリーを乗せるのは物量的に無理だったので,やめましょうと話をしました。
4Gamer:
それは知りませんでした。
石渡氏:
ただ会社からは家庭用に移植するにあたってのウリがほしいと言われて……,それならストーリーモードはいいけど,関わらないから名前は出さないでと伝えました。
4Gamer:
そうなりますと,当時のストーリーモードは設定だけ貸して,あとは自由にやらせた形だったんでしょうか。
石渡氏:
いやもう本当に一切見ていないんですよ。ただ,「GUILTY GEAR Xrd」からストーリーを展開するにあたって掘り起こしはしました。ユーザーがプレイするものですし,そこで得たイメージや世界観を無視して,続き物としてやっていくのは不誠実だと思いましたので。
「GUILTY GEAR -STRIVE-」開発インタビュー。オープニングムービーやストーリーモードなど映像パートの開発秘話を聞いた
――2021年7月12日収録
「GUILTY GEAR ‐STRIVE‐」公式サイト
(c) ARC SYSTEM WORKS
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GUILTY GEAR ‐STRIVE‐価格:スタンダードエディション:8580円
デラックスエディション:11550円発売日:2021/06/11ジャンル:アクション