[CEDEC 2021]「動くガンダム」は,どのようにデザインと可動を両立したのか。実現までのプロダクションノート
CEDEC 2021の3日目となる2021年8月26日,「“不可能を可能に”『動くガンダム』実現までのプロダクションノート」という講演が行われた。ゲームと直接関係のある話ではないものの,この面白そうな内容を,最終日の最後に,前編と後編に分けて2講演ぶんの時間を使って行われれば,聴講しないわけにはいかないというものだ。
どのように「動くガンダム」が作られていったのか,講演内容をお伝えしよう。
登壇したのは,ガンダム GLOBAL CHALLENGE GGCテクニカルディレクターの石井啓範氏(左)と,アスラテック 取締役 チーフロボットクリエイター/GGCシステムディレクターの吉崎 航氏(右)だ
「動くガンダム」が何かを念のため説明しておくと,GUNDAM FACTORY YOKOHAMAで2022年3月31日まで展示されている,可動する実物大ガンダムのことだ。「機動戦士ガンダム」の主人公機であるRX-78-2が,空に向かって指をさすポーズや,片膝立ちのポーズを取る。
実物大ガンダム自体は,お台場で2009年に初めて登場し,2017年からはデストロイモードに変形するユニコーンガンダムが展示されてきた。これとは別に,横浜で2020年末から公開されているのが,「動くガンダム」である。
2009年の展示は,52日間で約415万人を動員し,大きな反響があった。そこで,今後は動かそうということで,ガンダム GLOBAL CHALLENGEが2014年に設立され,プロジェクトが動いてきたという。
プロジェクトの目的は,もちろん18mの実物大ガンダムを動かすこと。そして,ガンダムらしい動きを再現することだ。その開発キーワードとしては,さまざまな分野のテクニカルパートナーと協力しての「技術チャレンジ」,今ある技術での「実現可能性」,転倒などのない「安全性」,そして可動と両立する「デザイン」などを定めていたそうだ。
最初の丸3年を開発チームの立ち上げに費やしており,石井氏や吉崎氏,そしてクリエイティブディレクターの川原正毅氏によるディレクター3人体制や,テクニカルパートナーの9社が決定していった。
2018年に本格的な開発がスタートし,テクニカルパートナーの代表者を含む30人ほどでの会議を,隔週で行って計画を進めたという。2019年には,各部分の詳細設計や部品設計が始まり,パートごとの仮組みなども行われた。
そして2020年に,全体の組み立てと各種テストを行い,お披露目という流れになっている。
「動くガンダム」の実現には,さまざまな分野の技術が集結している。「Gドック」と呼ばれる保守点検用のデッキは,巨大な機械を格納できる建造物としての技術。ガンダムを支える台車の「Gキャリア」は,重いものを動かす重機や建設機械の技術。ガンダム本体のフレームは重機の技術,間接やシステムは産業用ロボットの技術,手の部分はエンターテイメントロボットの技術といった具合だ。