wizardry 囚われし魂の迷宮#21「シーインの迷宮第10層の探索」

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Duration: 1:28:17
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ぼるたく船団の入港当日、出迎えに港に行く前に、早めに行って朝食をみんなで取ろうという話になった。
迷宮の疲れが取れていないのか半分寝ぼけて起きてきたペチカは、目を擦りながらだらしなく大きなあくびをする。
「ペチカ、もう。見た目で忘れちゃうけど、もう子供じゃないんだから」と、妃翳がペチカにタオルを渡す。
「ほぇ・・・。わちは、立派なおとなでちよ。」と、胸を強調する。
それを聞くと、ソランが悲しそうに自分の胸を確認している。
ペチカが迷宮内で服を脱ぎ始めた一件から、最近はこれが定番のやりとりになっていた。
「なんだか、館内がピリピリしてないか?」
火鉈と男性陣も、揃って顔を洗いに来た。
マリアの話によれば、アイトックス東側の制海権を守護する船団の首領が到着するらしい。
予定より1日早い入港に、マリアが何人もいるように見える速さで駆けずり回っていた。

支度を終え街に出たが、王宮から港へ続くメインストリートに近衛兵の姿が多く見えた。
ディメント6世自ら、船団を出迎えるということだった。
ぼるたくの船団が、ディメント王国とどのような関係であるのか。
その対応を見ても、いつものぼるたくたちを見ているペチカたちにはピンとこなかったのだが。
港がよく見えるテラス付きの店を選び、港を見ながらテーブルに付く。
街の近衛兵を見て港で何かあるのかと、野次馬的なひとたちもチラホラ見てとれる。
ペチカが店に入ってから、客の視線が彼らに集まっていた。
「やはり、港で何かあるんだ」とか、「あれが、破壊王ペチカ」とか聞こえてくる。
アイアンハンドの店のクレイモアをへし折った一件が、どうやら広まっているようだった。
火鉈とペチカがこの街で名を馳せるイビルを中心とした冒険者と衝突した話も、街の噂になっていた。
ノーザンライトは勉強好きがあだとなり、高額な学術書や魔術書を買い込むことで目立ってしまい、バロンは一番高額なワインを注文していたり。
金周りの良いPTは、その実力も伺い知れてしまう。
妃翳をナンパしようとした不幸な男は、早業の短刀を突き付けられたとか。
その男は、ドラゴンスレイヤーを持った火鉈に追いかけられたとか。
終始黒いローブを纏い、得体のしれない魔術師。
嫌でも注目が集まりつつあり、今更どうにもできない状況は把握していた。
不便さもさるものながら、各々が抱える諸事情への不都合が起こりえる予見。
落ち着かない朝食を摂りながら、物思いにふけりながら港を眺める。

しばらくすると、晴天の水平線に船団が姿を現す。
豆粒のように見えていた点は、次第に大きく見えてくる。
「火災?」
ソランが、船団から尾を引く煙に気付いた。
大きな三角帆や四角帆の船舶の外周に、煙のようなものを上げている6隻の船舶が見えた。
周りの客もそれに気付き始め、店内が賑やかになってくる。
ガタッっと椅子を鳴らし、一同は港へ足を進めた。
その時、大きなラッパの音が木霊した。
いつの間にか港へ続く道に、近衛兵たちが道の両脇に整列している。
その中央を、白い馬車が騎士たちに守られながら進んでいた。
騒動に気付き、家々から住民が飛び出してきていた。

なんとか人があふれる前に衛兵に止められる最前列に移動したが、どんどん港に人が押しかけ始めていた。
馬車が停まり中からクラウス侍従長が扉を開け、それに続きディメント6世が姿を現す。
大きな歓声が上がり、それに手を振っている。
民衆の目はディメント6世に集まっていたが、ペチカたちは煙を吐き出す船が心配で目が離せなかった。
その時、不意に火鉈は服を引っ張られ声を掛けられた。
「火鉈様、妃翳様。」
2人が後ろを振り向く。
「オルト!」
フードを深くかぶりオルトと呼ばれた女性が、「シーっ」っと人差し指を立てた。
「ペチカ様もお元気そうで何よりです。ぼるたく様がお待ちですので、こちらへ」
案内される途中、火鉈と妃翳がオルトに声をかけている。
リン・オルト。
ヒューマンにして中立の盗賊で、火鉈と妃翳がホーライを脱出する時に尽力した一人である。
元々2人の世話係であり、三つ子の姉妹であった。
三つ子で生まれてしまった彼女らも生まれながらに命の灯を落とすところだったが、長女のポタシュが忍者として生まれてきたことと、分家の末端だったために殺されずにすんでいた。
ホーライ脱出の際、三女のスキックは彼らを逃がすためにしんがりを務め、命を落としてしまっている。
ポタシュは当時すでに忍びの任についており、アイトックスの街に潜入していた。
ペチカの集落に逃げ込み、火鉈と妃翳の共に生活してきたのがオルトであった。
ペチカの集落が魔物に襲われアイトックスの街に逃げ延びたあと、自ら自活する道を切り開くべく盗賊ギルドへ入ってから疎遠になっていた。
「ねぇオルト、あなたあれからどうしているの?」
妃翳が声をかけるが、オルトは周囲に気を配りながら「任務中ですので、今はお許しください。」と申し訳なさそうに答えるだけだった。

港の外れに付き、オルトは周りを見渡してから「ここから。お入りください」と、倉庫へ案内された。
6人が中に入ると、「私は外の警戒をしていますので。」と扉を閉めて姿を消した。
そして中から、「よう!わざわざ移動してもらって悪かったな」とぼるたくが声をかけた。
「状況が呑み込めないと思うが、詳しい話は後になる。取り急ぎの要件は、お前らは宿に戻って待っていてくれ」
一瞬で真顔になり、静かな口調でぼるたくが続ける。
「我が国の首領、ドン・レオがお前らに用があっての来訪なんだ。ついでって訳ではないが、ディメント王国とも大事な外交もある。」
色々と聞きたいことはあったが、ぼるたくの真剣な顔がそれを諦めさせた。
「大丈夫だ、時間はあとで嫌ってほど取ってやる。とりあえず、ドン・レオを王宮まで護衛したら、俺たちは宿へ戻る。」
「じゃあ、また後でな」と、ぼるたくは倉庫の奥へ消えていった。

ペチカたちが外へ出ると、港へ船が停泊するところだった。
火事かと思った煙は、変な筒状の煙突からモクモクと上がっている。
船員も慌てた様子が見えないので、どうやらあれで正常なのだろう。
本当に色々と聞きたいことが山積みだったが、ぼるたくに言われた通り、人目を避けて宿に戻ることにした。

宿へ戻ると、マリアが忙しそうに受け入れの準備をしていた。
特にやることもないので中庭のテラスへ陣取り、火を起こしお茶の準備を始めた。
何やら予想のつかない出来事が待ち構えているような予感はするが、そもそもぼるたくたちのこともよく知らない。
ペチカたち6人にしても個人的な事情については、話したことがない。
親友のような、信頼感。
安らぎを感じる、家族のような存在。
何よりも1年近く背中を預け、命を繋ぎ合ってきた仲間だった。
それでも尚、相手を想うが故に言えないことがあるのだった。

ぼるたくを待つ間お茶をすすりながら会話を交わすが、龍の紋章が浮かび上がった1件の疑問以外に出る話もなかった。
ほんの小さな、きっかけさえあれば。
ほんの少し、素直な気持ちを口に出す勇気があれば。
そんな歯がゆい時間を割いたのは、バロンだった。
「私は、戦いなんて嫌いなんですよ・・・」
4人がバロンへ向き直り、ノーザンライトはバロンの肩に手をかけ声をかける。
「今、その話をするのですか?」と。
部屋を一緒にするライトは、少しながらバロンの身の上を聞いていた。
「前にもあったじゃないですか。私たちは、もっと話し合った方がいいと」
「なに、つまらない身の上話です。ですが、少しだけ聞いてください」
「私は子供のころから血を見るのが嫌いで、弓も剣も持てませんでした。」
そう話し始めた。
古いしきたりが残る深い森の民で、細々と小さい集落を守り暮らしていたという。
エルフの純潔を尊び、狩りと農作で村を守っていた。
武器を手にしないバロンに対し子供たちのいじめが始まり、次第に大人たちの目も厳しいものになっていったという。
魔物の襲撃が度々ある村で、戦えないエルフは厄介者として村を追い出されることがしばしばあった。
バロンが6歳の時に父親が狩りで負傷し、村へ担ぎ込まれてきたことがあった。
村の僧侶が不在の時で、薬草など施すも重症だった。
その時バロンが手をかざすと、龍の紋章が浮かび上がり知りもしない治癒の魔法を使ったらしい。
バロンの両親は我が子の未来を心配し、もし適性があるのならばと彼を寺院に預けたという。
それから僧侶としての適性を見出され、勉学と修業を嫌々ながらしていたという。
そして9歳になった時、小さな村を厄災が襲った。
白いドラゴンが村を襲い、何もかも焼き尽くしていってしまったのだ。
両親がバロンを床下の物入れに押し込んだおかげで、彼だけが生き残ってしまったという。
そして、ただ泣くだけで怯えていた自分を恥じていると言った。
その後は救援に来た寺院の僧侶に助けられ、彼らと共に各地を回る修行僧となった。
わずか12歳で僧侶の能力を習得し、司教となってからは1人で放浪の旅を続けていたという。
ペチカの村も、バロンが立ち寄る集落のひとつだった。
大災害の時もペチカの集落へ向かう途中だったが、途中で魔物に襲われたキャラバンを見かけてアイトックスの街まで同行していた時にペチカたちと合流したと。
「私はまだ、子供だった自分と折り合いがついていないんですよ」と。ぽつりと言う。
各地を巡礼しながら、白いドラゴンの情報も集めていたという。
「とどのつまり、私はあなた達を利用し、迷宮の探索をしていたわけです」
そう言って、バロンは皆に頭を下げた。

「それを言ったら、わちも同じでち」とペチカが、口を開く。
「わちも村を失って、秘宝まで魔物に盗まれまちた」
「みんなのお陰で、ドワーヴェン・ウェポンは見つかりまちた」
「わちがこの街で、有名な冒険者になれば・・・生き残りの者が、集まってくるのではと・・・思って」
ペチカが、申し訳なさそうに下を向く。
そして「それに・・・わちは・・」と言いかけた時、ぼるたくの声がそれを遮った。
「大事な話のところ、すまないが。その辺の話は、もう少し後にしよう」と。
火鉈が「たとへぼるたくでも、今は仲間が大事な話を」と言いかけたが、「わかっている。わかっているから、少し落ち着いてくれ」とぼるたくは言った。

「これから少し、大事な話をするから聞いてくれ。」と、両手を前に出して頭を下げた。
「まずは、お前たちにある龍の紋章についてだ」と顔を上げると、全員がハッと耳を傾けた。
そして自分の首筋を見せると、そこには同じ竜の紋章があった。
「これはな、黄龍フィル・エルンの紋章だ」
「フィル・エルンですって!」ノーザンライトが声を裏返していると、バロンも驚きの表情をあらわにしている。
「そうだ。俺たちは黄龍が生んだドラグーン族の正当な血を引いている。それが何を意味するかは、司教であるバロンと僧侶のライトには何となくわかると思う」
世界の均衡を守る守護者の末裔、その血は薄れていっても命を守るという。
蘇生呪文そのものも、その血なくしては成功率が著しく低いというし、蘇生される側も同じであると言われている。
彼らが何度も死の淵から生還できている事実が、それを物語っていた。
「驚いたついでで、もういくつか驚いてもらうが・・・。」と前置きをおいて、ぼるたくが淡々と話を続けた。




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